僕の見たシンガポール

シンガポールから思ったことを日々更新していきます。

前川恵議員に感謝の意を表したい

自民党政権が選挙で大勝しましたが、アベノミクスが無条件で支持されたわけではなく、アベノミクスは景気回復につながっておらず、実質賃金が低下しているという批判があります。

 

その批判に対して、自民党の前川恵議員が「どうしよう、分かんない」という素敵な回答をしてくださったおかげで、今回その問題がより一層衆目を集めることとなりました。

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案の定、この受け答えはネット上で、大炎上でボッコボコなわけでして、僕もムキー!と義憤に震えたわけなんですが、そこでふと聖書の有名なエピソードが頭をよぎったわけです。

ある時、イエスが弟子たちを連れて街中を闊歩していると、一人の女性が民衆から石を投げつけられていた。

なぜこんなことをしているのかと、弟子が民衆の一人に問うと、「この女は罪人だからだ」と答えた。

 

それを聞いたイエスは民衆にこう言った。

「ならばしかたがない。続けなさい」

そしてこう続けた。

「ただし、一度も罪を犯したことのない正しき者だけこの女性に石をぶつけなさい」

と、いうわけで、この義憤をぶつけて、個人攻撃をしたり比例代表制の問題点について語ったりはたまた「これだから女はダメなんだよな」といった女性蔑視の発言をする前に、まずはこの問題を自分自身で答えられるようになっとかなければいけない、と思いまして、今回は、簡単にまとめてみました。

 

実質賃金は本当に下がっているの?

まずは、質問の内容が真実かどうかを確認しましょう。

厚生労働省のページを見る限り、どうやら間違いはなさそうです。

簡単のために、産経デジタルのグラフをポイッと拝借して貼っておきますね。

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実質賃金が下がることは悪いことなの?

なんとなく、実質賃金が下がっていると聞くと悪いことのような気もしますが、そこを次は確認しましょう。

 

まずは、そもそも実質賃金とは、何かについては、Wikiさんから引用しておきます。

実質賃金(じっしつちんぎん)とは経済学用語の一つ。労働者が労働に応じて取った賃金が、実際の社会においてどれだけの物品の購入に使えるかといった大きさ。これの数字は名目賃金から消費者物価指数を除することで求められる。

つまり労働者の給料が二割増加しても、同時に物価も二割増加しているならば労働者は多くの物資を購入できるようになっていないため実質賃金は向上していないというわけである。

労働者の賃金が変化していなくても経済状況などにより物価が上昇しているならば実質賃金は下落しているということになる。

これを見る限り、実質賃金が下落しているというのは、何ら望ましいことではないということを感じますね。

 

そもそも景気回復のサイクルとしては、

  1. 企業が儲かる
  2. その儲かった額を還元することで、賃金が上昇する

の順番です。経営者は慎重になるため、賃金の上昇は遅れてやってくるとも言われていますので、この段階での判断は時期尚早とも取れますが、どちらにせよ、今後の実質賃金の上昇を考える上で、企業が儲かっているかどうか、さらにはそれが賃金として還元されるかということが非常に大事になってくるわけですね。

 

じゃあ企業は儲かっているの?

上場企業各社の2015年3月期の経常利益の昨対比予想をこちらを参考にすると、全産業平均して3.5%の改善と予測していることが分かります。

 

「お、じゃあ企業は儲かっているね!」と結論付けたくなりますが、細かく見てみると、下記のグラフのようになります。

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これにより、製造業は儲かっているけど、非製造業は儲かってないよね、という結論が一目で分かります。

 

また、全産業平均ではプラスとなっていますが、これは上場企業の平均でして、このデータの中では製造業の企業数は57%を占めていますが、世の中全体に占める割合はわずか11%でしかありません。(データは中小企業庁より拝借)

 

GDPにして製造業が占める割合は18%ほど、従業員数だとしても24%だけでして、76%の人が勤めている会社が平均して儲かっていなかったら、そりゃ賃金は上昇しないよね、ということが分かります。

 

製造業の賃金は上昇するの?

そもそも、製造業が儲かっているのは、海外での売り上げが円安影響を受けて拡大していることに尽きます。あとは、その儲けを、国内の人件費の高い人材に還元するのか、海外の人件費の安い人材にもっと投資をするのか、というところが焦点ではないでしょうか。

とはいえ、ある一定の割合は国内に還元するでしょうから、「製造業の賃金は上昇する」と言って間違いないと思われます。

 

なんで、非製造業は儲かってないの?

結論から言うと、

  1. 一気に進行した円安
  2. デフレに慣れきった消費者
  3. さらに消費税増税によって冷えた消費者心理

の3つによって、コストは余計かかるけど、価格に転嫁できないので儲からないという状況です。

 

1点目ですが、円安によって、海外から輸入している原材料は円換算で全部値上がりしているわけでして、2013年頭のドル80円だったときに比べて、今のドル120円下では、単純計算で原材料が50%値上がりしているわけです。

日本一分かりやすい細野真宏先生の本でも下記のように説明されています。

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カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

 

 

問題は、このとき、モノの値段を単純に上げられればいいのですが、以前にもちょっと触れましたが、日本はすっかりデフレに慣れきってしまっていまして、値上げに対して極端に敏感な消費者心理が築き上げられています。

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さらに、そこで消費税増税によって、冷えてしまった消費者心理はより値上げを難しくするわけです。企業としても、消費者が離れて売り上げが減ったら元も子もないわけですから。

 

それでも、最近は吉野家だとか日清オイリオだとかの企業が値上げに踏み切っているのが見うけられますが、要するにもう限界なので、勇気を持って値上げをするしかないという状況なわけです。

 

ただ、この記事にある通り、節約を推進する動きは間違いなく出てくるので、果たしてこれらの勇気ある値上げがうまくいくかというところはまだ不明なところです。

(こういう節約の動きが、結果的に自分たちの首を絞めるだけだと個人的には思いますが)

「これまでと同様の生活をしていると、間違いなく生活費が足りなくなるはずなので、生活のあらゆるところで見直しをして、替える必要があります。これを私は『替え活』と呼んでいます」とし、例えばMサイズで270円のホットコーヒーを出すカフェチェーンに行くのではなく、同じくらいの量でありながら150円で飲めるセブンイレブンを活用したり、ナショナルブランド商品をPB(プライベートブランド)に切り替えるなどの「替え活」を提案した。

 

じゃあ、どうやって非製造業を儲けさせるの?

もうここからは完全に個人的な素人の意見ですが、儲けるためには、要するに売り上げを上げるかコストを下げるか、しかないわけです。

 

なので、必要な方策としたら、

  1. 消費者に値上げを受け入れさせる(円安をこのままの水準でキープするなりもう少し進行させるなりして、どの商品もどんどん値上げをさせて、消費者心理に値上げ耐性を作る)
  2. タフな環境下で企業に死ぬ気でコストを削らせる
  3. その際に、人件費は削られないように正社員割合を高める政策を行う
  4. (しばらくしたら円安を一旦落ち着かせてコストを下げてあげる)

といったところじゃないでしょうか。

 

と、いうわけで、非製造業企業には辛い冬の時代が当分訪れますが、

  • 上場企業は製造業の割合が高いので、ぱっと見の数字は悪くない(「アベノミクスはうまくいっている!」と言いやすい)
  • さらに、日本株が外貨換算で割安に映るため、株価は円で見たら高い水準で推移しやすい
  • そもそも選挙が終わったばかりなので非製造業周りの話は4年後までになんとかすればよい
  • (消費者に値上げ耐性ができたら、消費税も上げてしまえるかもしれない)
  • 実質賃金?そんなものは遅れて来るもんだからもう少し辛抱しなさい)

という感じで安部さんは考えていらっしゃるじゃないでしょうか。いや、想像ですが。

 

 

と、まあそんな感じで、自分の考えをこうやってまとめることもできましたし、僕も含めて世間を啓蒙してくださった前川恵議員には感謝したいと思うわけです。