僕の見たシンガポール

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かわいい子にはレベルに応じてガイドをした上で、草葉の陰から見守りながら旅をさせよ-リーダーと失敗論 その1

 

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失敗を恐れるな

失敗から学べ

失敗は成功の母である

 

巷ではこんな言葉が溢れかえっています。

 

その通り!だと思いますし、ちきりんさんも非常によくまとめられているので、わざわざ僕が再度そこをまとめる必要もないかと思います。

 

失敗は「悪いことだが許されるべきこと」なんかじゃありません。

自分が手に入れたいモノに到達するための、必須プロセスなんです。

 

そう、なので、個人としてはガンガン失敗をして、

すぐさま立ち直って、学んでいけばいいんだと思います。

 

では、自分がリーダーとなったときにも、

部下や組織に対してはどうするのがよいのでしょう?

「失敗から学べ!」と失敗を推奨したらいいんでしょうか?

 

 

リーダーの失敗に対するジレンマ

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想像してみてください。

 

あなたは営業部の課長。今月の売り上げ目標に対して、達成率はまだ50%。残りはあと3日。売り上げ目標は必達が信条のバリバリの営業会社です。

 

明後日に未達の売り上げを全てカバーできる規模の商談を控えています。しかし、担当は新人のAくん。今まで大きな商談の経験もない。一方あなたはかつてのスーパースター営業。心を掴む商談はお手の物。

 

周囲の誰に聞こうとも、冷静に分析しても、Aくんで受注できる可能性は20%以下。あなたが準備をして商談をしたら、80%近くまで引きあがりそうです。

 

さて、あなたはAくんに「失敗してこい!」と送り出せるでしょうか?それとも、「今回は俺が準備とプレゼンをやる」と商談へ赴くでしょうか?

 

会社という組織に所属している限り、あなたは結果を出さなければいけません。失敗を許容し、挑戦を標榜するのは大切なことですが、それも全て結果を出してこそです。

 

失敗を推奨した結果、納期に間に合いませんでした。目標は達成できませんでした。大赤字を出してしまいました。これではリーダーとしては失格です。

 

残念ながら、競争が激しく、仕事量が膨大な現代社会において、リーダーは次から次へと結果を求められる状況に置かれています。そんな中で、確実に結果が出せる道を選ぶのは仕方がないことであり、あまり悠長に部下に回り道をさせている余裕がありません。

 

つまり、失敗の大切さを多くの人が知りながらも、多くの組織において、失敗を許容できない実情なのはそういうわけです。

 

 

組織にとって、失敗の持つ意味

 

リーダーがどうするべきかというのを語る前に、組織にとって、そもそも失敗とはどういう意味を持つのかをまとめておきましょう。

 

組織にとって、失敗とは2種類に分けられるかと思います。それは、

  1. 組織が答えを知っていることに関する失敗
  2. 組織が答えを知らないことに関する失敗

の2つです。

 

たとえば、ちきりんさんのブログにも貼ってあった、ホリエモンの宇宙開発の失敗の話は、前者にあたります。どうやったら安価で民間開発のロケットを成功させるかという話は、ホリエモンの会社の誰も答えを知りません。

 

それに対して先ほどの営業課長の例は後者です。課長であるあなたはどうすれば成功するかという答えを知っています。部下個人がそれを体得できてないだけです。

 

これらを考えると自ずと組織にとって、失敗の持つ意味というのも2つに分けられるということが分かります。つまり、

  1. 組織に属する個人の成長を促進する、個人の学びのための失敗
  2. 組織が新しいビジネスや手法を切り開くための、組織の学びとしての失敗

ということになります。

 

どちらが大事でどちらが大事でない、なんてことはありません。どちらも組織の将来の永続的な成長のためには必要な投資です。では、リーダーはこれらに対してどのように振る舞っていけばよいのでしょうか。

 

組織が答えを知ってることに対する失敗に対して

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結論から言うと、当たり前ですが、部下にガンガン挑戦をさせながら、彼らの成長を促しつつ、さらには結果を出すことを両立させることがリーダーの役目です。

 

そんなことできるのかって?簡単に言うと、リーダーであるあなたの力量と心構え次第で可能です。なぜならば、組織やあなたは答えを知っているわけですから、いざとなったらば大惨事になる前に尻拭いはできるわけです。

 

つまり、リーダーとしての力量が問われるのは、どの程度のチャレンジを部下に課して、どのようなガイダンスをしてあげて、さらにはどのタイミングで見切りをつけて尻拭いをするかというポイントです。

 

「かわいい子には旅をさせよ」と言いますが、旅をさせつつ、草葉の陰から常に見守っていて、致命傷を追う前に助けるイメージですね。

 

先にあげた営業課長の例では、これがまだ月初で、他の部下で売り上げがカバーできそうだったらば、任せてみるという判断もできます。もしくは提案までにもっと時間があったならば、手直しできるギリギリまでは新人に提案書を作らせて、手直しをすることもできます。例にあったようなギリギリの状況だとしても、提案書を準備をして、キーの部分は自分でプレゼンもしますが、一部分を新人に任せるという決断もありです。

 

さらに、このとき重要になってくるのが「どのようなガイダンスをしてあげるか」という点です。チャレンジを与えるべきと言いますが、丸投げをすることが正しいわけではありません。

 

赤羽雄二氏の「世界基準の上司」には以下のように書かれています。 

上司の価値は、部下にどのくらい具体的な指示を出せるかに大きく依存する。意志決定をすれば「後は部下がやるべきだ」「部下は顎で使えばいい」と考えているならそれは論外で、上司の役割の勘違い、誤解に他ならない。

 

部下に指示を出す時、できるだけ具体的な指示をする必要がある。あいまいな指示でこちらのニーズを理解してほしい、汲み取ってほしいというのは無茶な願いであり、上司の横暴、わがままだと考えている。そういうことはしていないと思っている上司でも、うっかりあいまいな指示をすることがある。

 

(中略)

 

上司は、部下のこれまでの経験、スキル、性格等を十分考えて、何の仕事を依頼するか、どこまで具体的に指示すべきか、きめ細かく考える必要がある。

 

 

これらを総合すると、部下にチャレンジをさせることはリスクも伴いますし、何よりも手間がかかります。が、答えを知ってる人たちだけで常に解決をしていたらば、部下の成長はありません。人の成長しない組織には限界が訪れます。何よりもリーダーであるあなたはいつまで経っても部下の仕事の肩代わりをし続けなければなりません。部下の成長があなた自身や組織の将来のためにつながるという意識を持って意図的に取り組むことが、あなた自身のリーダーとしての力量を引き上げていくことでしょう。

 

さらには、あなたに部下を持つ部下がいるならば、その意識を全員に徹底させることが強い組織を作る上での礎になるに違いありません。

 

じゃあ、組織が答えを知らないことに関する失敗はどうしたらいいんでしょう?

後編に続きます。