僕の見たシンガポール

シンガポールから思ったことを日々更新していきます。

シンガポールの移民政策と日本はどうなのよ

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マリーナベイサンズを見ると、いつもメカっぽいなあと思うタケナカです。ビーム発射するし、火も出すし。

(イメージはファイナルファンタジーのアレクサンダー)

 

移民ってなんで必要なのさ

さて、そんな華やかなマリーナベイサンズですが、僕が数年前に観光で来た時は影も形もありませんでした。

昔は、ナイトサファリを見に行って、世界3大がっかりスポットのマーライオンにがっかりしたあと、そしてリトルインディアでインド人と戯れるくらいしかシンガポールではやることがなかったのです。

気づけば、マリーナベイサンズ、ユニバーサルスタジオ、世界最大の水族館とすっかり様々な観光名所が出来上がってきています。すごい急速な変化ですね。

実のところ、1990年から2010年の20年間で、シンガポールの一人当たりGDPはおよそ3倍になったと言われていまして、この急速な経済発展の成功の鍵は色々と言われていますが、一つに大きいのは移民政策だと思います。

 

そもそも、移民政策の根幹をなす考え方というのはシンプルで、人口ボーナス・人口オーナスというものです。

人口ボーナス:一国の人口構成で、子供と老人が少なく、生産年齢人口が多い状態。豊富な労働力で高度の経済成長が可能。多産多死社会から少産少子社会へ変わる過程で現れる。
人口オーナス:《「オーナス(onus)」は重荷・負担の意》 一国の人口構成で、高齢人口が急増する一方、生産年齢人口が減少し、少子化で生産年齢人口の補充はできず、財政、経済成長の重荷となった状態

上記がデジタル大辞泉からの定義引用なんですが、「誰も語らなかったアジアの見えないリスク」という本によると、下記のようにまとめられています。

誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本- (B&Tブックス)

誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本- (B&Tブックス)

 

 

・人口ボーナスは一国に一度きりしか訪れない高度経済成長のチャンス

・人口ボーナスが終わると、少子化とベビーブーム世代の高齢化がもたらす人口オーナスとの戦いで成長できなくなる。

・つまり、人口ボーナス期に確立した国の豊かさが、その国の繁栄の頂点となり、あとは衰退する。

 

要するに、経済発展とともに出生率が目減りしていきますが、それにより人口オーナス期に突入する前に、無理やり外部から労働人口を調達することで人口ボーナスを維持して発展させようというのが移民政策の根幹にあります。

 

シンガポールの移民政策の壁

しかし、移民政策は万能薬ではなく、必ず大きな壁にぶち当たります。

それは、シンガポールにおいても例外ではありません。移民政策で成長してきたシンガポールですが、現在移民をなるべく絞り込む方向に動いています。

これは、国民の移民に対する反感なども大きいですが、誤解を恐れずに言うならば、「国が乗っ取られる」のを防ぐためでもあります。

 

シンガポール人の出生率は日本よりも低く、1.2程度しかありません。放っておくと、がんがんシンガポール人の人口は減り続けます。

そこで、マレーシアやインドネシアといった、出生率が2を超えている国々からの移民を労働人口を増やすために受け入れ続けていると、彼らはポコポコ子供を生むわけですから、最終的には純血シンガポール人がマイノリティになってしまいます。

 

そこで、政府としては誰でもウェルカム!するのではなく、「短期的に滞在して経済活動に大きく貢献してくれる人物」か「身も心もシンガポールに染まって永住してくれる人物」を選抜して移民をさせてくる必要があるのです。

 

シンガポールでは、EPといういわゆる就労ビザがありますが、これの付与基準の年収がどんどん引き上げられています。つまり、前者の「短期的に滞在して経済活動に大きく貢献してくれる人物」をより絞り込んでいるわけです。

その上で、PRという永住権は、年収ではなく、「身も心もシンガポールに染まって永住してくれる人物」で決められていると言われています。華人が移民をしてきて作られた国シンガポールに染まってくれる可能性のある人々といえば、そう、華人です。(当たり前ですね)

 

日本は移民にむいてない?

さて、日本の移民政策も色々と議論されているのですが、どうなんでしょうか。感情論で議論がなされやすい領域ですが、シンガポールの例を参考に考えてみたいと思います。

移民を全く推進しなければ、人口オーナス期における問題から逃れられません。2050年の【日本】未来予想図 - NAVER まとめから一例として引用してみます。

GDP世界比率は12%から3%へと1/4にもシュリンクするそうだ。 2050年のGDP世界比率では、中国29%、インド16%、アメリカ16%、ブラジル5%、メキシコ4%、ロシア4%、日本3%、インドネシア3%、の順となる。 2006年、日本のGDPの世界比率は約12% 2020年、日本のGDPの世界比率は約8% 2035年、日本のGDPの世界比率は約5% 2050年、日本のGDPの世界比率は約3% これはまるで日本の消費税の反比例のような話のようだ(笑えないが)。 2050年、日本は残念だが、世界に影響を与えるようなインパクトをまったく持ちあわせていない。
少子高齢化の影響が大きく、30年代以降の成長率はマイナスになる」 「15年度までに消費税率を10%に引き上げても、50年の政府債務残高は対GDP比で約600%に達する」 経団連の予測が特殊なわけではない。こうした予測はどの機関のものとも多かれ少なかれ共通する。そうした悲惨な未来が私たち日本の等身大の実力を映したものであり 、ありえない未来ではないという厳しい現実を指し示している。

 

こういった様々な問題が待ち受けているわけですが、それを解決するために、移民政策を推進していくと、シンガポールと同じような問題にぶち当たります。

なので、「短期的に滞在して経済活動に大きく貢献してくれる人物」か「身も心も日本に染まって永住してくれる人物」を選抜しなくてはなりません。

 

前者に関しては、高スキルの移民がホントに日本に来たいのか、という議論はありますが、文化的側面も含めた日本という国の海外での人気ぶりを見ている限り、当面はまだ難しくなさそうです。(もちろん、国民の英語教育はもっと推し進める必要がありますが)

 

もっと大きな問題が後者の方です。シンガポールだったら華人という同じルーツを持つ分かりやすいターゲットがいますし、アメリカはそもそも移民で成り立った国なのでアメリカ化できるターゲットはいっぱいいます。

日本人は残念ながら島国で隔離されて長いこと独自に生きてきたので、古来は大陸から来たとは言え、あまりにそのアイデンティティは異なっています。

「日本人化」が出来るという明白なターゲットは存在しないのです。ここが、シンガポールやアメリカとの1番大きな違いであり、単純にそれらの国がうまくいっているから真似しよう、とはいかない部分です。

この「日本人化」がうまく進められない以上、大規模な移民政策は日本において大きなリスクを抱えているといっても過言ではありません。(国を乗っ取られる、は言い過ぎかもしれませんが)

 

これらを総合して考えた場合に、個人的には「高スキル移民に限定して門戸をまず開く」というのが現実的なような気がします。(何もせずに細々と死んでいくのは好きじゃありません)

「日本人化」が出来ない限りは、結局、先細っていく現状は止めようがありませんが、その進行を遅らせることは出来ます。遅らせている間に実際の移民の様子から何かいい解決策が出てくる可能性もあります。

あとは、「どうやって高スキル移民を呼びこむのか」「国民の英語教育をどう進めていくか」「治安の悪化等予想される問題にどう対処するか」といったところを考えていけばいいわけですが、ここら辺は色々と議論されているし、長くなったのでここら辺でやめておきます。

 

ということで、「移民とりあえずちょこっと進めてみたら派」の僕がお送りいたしました。